「都立中高一貫校、気になるけれど、情報が多くてどこから手をつければ良いか分からない…」多くの方がそう感じているのではないでしょうか。 学費の魅力は大きいものの、独特の適性検査や作文の対策、そしてお子様に合った学校選びなど、疑問や不安は尽きないことと思います。この記事の著者である神泉忍は、2013年から10年以上中学受験指導に携わり、600人以上の受験生の指導やカウンセリングに従事してきたプロの中学受験講師です。オンラインとオフラインで私塾も運営し、日々情報を発信しています。
この記事でわかること
- 都立中高一貫校の基本的な情報(全11校の一覧を含む)
- 私立中学校との違い(学費、カリキュラム、入試難易度)
- 受検する上での注意点(思考型の入試、倍率、併願戦略など)
- 合格に向けた具体的な対策方法(学習戦略、作文対策の重要性)
この記事では、都立中高一貫校受検に必要な情報を網羅的に解説します。この記事を読むことで、都立中高一貫校に関する漠然とした不安が解消され、お子様にとって最適な志望校選びと、合格に向けた具体的な一歩を踏み出すことができるでしょう。 ぜひ最後までお読みいただき、後悔のない学校選びにお役立てください。
この記事書いた人「神泉忍」について
- 慶應義塾大学総合政策学部卒
- 2013年から10年以上中学受験指導に携わる
- 2017年からは、オンライン指導とオフライン指導を並行して実施する私塾を開設
- 国語と作文指導が専門
- Xで受験関連の情報を毎日発信中
- 中高一貫校専門作文添削塾を運営中
- 事業会社にてWEBマーケティング領域業務にも従事
- 当サイトではアフィリエイトプログラムを使用しています
都立中高一貫校とは?

全部で11の学校を指す
- 千代田区立九段中等教育学校
- 東京都立小石川中等教育学校
- 東京都立桜修館中等教育学校
- 東京都立三鷹中等教育学校
- 東京都立立川国際中等教育学校
- 東京都立大泉高等学校附属中学校
- 東京都立富士高等学校附属中学校
- 東京都立南多摩中等教育学校
- 東京都立白鷗高等学校附属中学校
- 東京都立武蔵高等学校附属中学校
- 東京都立両国高等学校附属中学校
都立中高一貫校は、東京都が設置する公立の中高一貫教育を行う学校群です。現在、それぞれが独自の教育理念や特色を持つ11校が存在します(千代田区立九段中等教育学校を含む)。これらの学校は、6年間の一貫したカリキュラムを通じて、生徒一人ひとりの個性や能力を最大限に伸ばし、次代を担う人材を育成することを目的としています。早期から探究学習や国際理解教育などを取り入れ、思考力や表現力を育む教育に力を入れている点が特徴です。
私立の中高一貫校との違い

1.学費が抑えられる
都立中高一貫校を選択する大きなメリットの一つに、学費の負担が挙げられます。都立中高一貫校は公立のため、私立と比較して入学金や授業料などの学費負担を大幅に抑えることができます。 施設費や教材費なども私立に比べて低廉な場合が一般的です。これにより、経済的な負担を軽減しつつ、質の高い6年間の一貫教育をお子様に受けさせたいと考える保護者にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。ただし、教材費や修学旅行の積立金、PTA会費などが別途必要になる点は留意しておきましょう。
2.大学進学以外の学習カリキュラムが充実している
都立中高一貫校の魅力は、大学進学指導だけに留まりません。多くの学校で、生徒の知的好奇心を刺激し、将来の可能性を広げるための多様な学習プログラムが用意されています。例えば、自ら課題を見つけて探究する「探究活動」や、教科の枠を超えた「クロスカリキュラム学習」、国際社会で活躍するための「国際理解教育」、将来の進路を考える「キャリア教育」などが積極的に導入されています。これらの活動を通じて、生徒は知識の習得だけでなく、思考力、判断力、表現力といった、変化の激しい現代社会を生き抜くために不可欠な力を育むことができます。
3.私立の入試に比べ勉強しやすい難易度になっている
都立中高一貫校の入学者選抜は、主に「適性検査」と呼ばれる形式で行われます。これは、私立中学で多く見られる教科ごとの学力試験とは異なり、小学校の学習指導要領の範囲内で、思考力や判断力、表現力などを総合的に測るものです。そのため、必ずしも塾で特殊な解法テクニックを大量に暗記する必要はなく、小学校の授業内容をしっかりと理解し、それを応用して考える訓練を積むことが対策の中心となります。このため、私立の難関校のような高度な専門知識を問う問題に比べて、小学校での学習を基礎として着実に取り組んできたお子様にとって、比較的対策しやすい内容といえるでしょう。
都立中高一貫校を受検するにあたっての注意ポイント

思考型の入試で、対策がしづらい
都立中高一貫校の適性検査は、単に知識の量を問うものではありません。資料を読み解き、そこから情報を整理・分析し、自らの考えを論理的に記述する能力や、課題を発見し解決策を提案する力などが求められます。そのため、一般的な教科のテストのように、知識を暗記すれば高得点が取れるというわけではなく、解答のパターンも決まっていません。この「思考型の入試」という特性上、どのような対策をすればよいのか掴みにくく、付け焼き刃の勉強では対応が難しいと感じる保護者の方が多いのが実情です。 日頃から物事に対して「なぜだろう?」と考える習慣や、自分の意見を整理して表現する練習が重要になります。

私立受験の勉強量と比べ難易度自体は下がっていますが、自分で考える力という抽象的な目標に向かって知的好奇心を高めていく必要があります。
人気が沈静化している側面もあるが倍率3~4倍の競争になる
都立中高一貫校は、その教育内容の質の高さや、私立と比較して学費が抑えられる点などから、保護者や小学生から非常に高い人気を集めています。近年では、人気が沈静化していますが、3〜4倍程度の倍率となっています。適性検査を突破するためには、早期からの計画的な準備と、適性検査で求められる思考力や表現力をしっかりと磨き上げることが不可欠です。
入試が同日に実施されるので、複数の学校を併願することはできない
都立中高一貫校の一般枠における適性検査は、例年2月3日に全校一斉に実施されるのが通例です(一部の特別枠を除く)。このため、複数の都立中高一貫校を同時に受検することはできず、出願時には志望校を1校に絞り込む必要があります。 各学校の教育方針、特色、カリキュラム、通学時間、校風などを事前に十分に調査し、お子様の個性や将来の目標に最も合致する学校はどこか、親子でじっくりと話し合い、慎重に検討することが求められます。後悔のない選択をするためにも、学校説明会や公開行事などには積極的に参加し、生きた情報を集めることが大切です。
入試日が1日のみしかないので、一発勝負となる
都立中高一貫校の入学選抜は、基本的に適性検査が行われる1日のみで合否が決まります(面接が課される学校もありますが、学力検査という意味では1日です)。私立中学入試のように、複数回受験のチャンスがあるわけではありません。まさに「一発勝負」であり、当日のコンディションや実力発揮が合否を大きく左右します。このため、学力向上はもちろんのこと、試験本番で平常心を保ち、持てる力を最大限に発揮するための精神的な強さや、体調管理も極めて重要になります。 模擬試験などを活用して、本番さながらの緊張感を経験しておくことも、対策の一つとして有効です。
小学校生活の報告書(内申書)も評価対象となる
都立中高一貫校の入学者選抜においては、適性検査の得点だけでなく、在籍する小学校長から提出される「報告書(内申書)」も評価の対象となります。この報告書には、小学校5年生及び6年生の各教科の学習の記録(いわゆる成績)や、特別活動の記録、行動の記録などが記載されます。選抜では、この報告書の内容が点数化され、適性検査の得点と合算して総合的に合否が判定されるため、日頃の学校生活も非常に重要です。 授業に真剣に取り組み、提出物をきちんと出すことはもちろん、学校行事や委員会活動などに積極的に参加する姿勢も大切にしましょう。
私立中学との併願をする受験生が多くなっている
都立中高一貫校の高い人気と厳しい競争率を背景に、多くの受検生が私立中学校との併願を選択する傾向にあります。都立中高一貫校を第一志望としつつも、万が一の結果に備えるため、また、入試本番の雰囲気に慣れるという目的で、試験日が異なる私立中学校を受検するケースが増えています。特に近年では、都立の適性検査と類似した思考力や表現力を問う「適性検査型入試」や「総合型入試」を導入する私立中学校も増えており、都立対策の学習が無駄になりにくい併願戦略も可能になっています。お子様の学力や性格、そしてご家庭の教育方針などを総合的に考慮し、戦略的な併願プランを立てることが、中学受験全体を成功に導く上で重要なポイントとなっています。
高校募集はされていない
都立中高一貫校は、その名の通り、中学校と高等学校の6年間を一貫したカリキュラムで教育を行う学校です。そのため、中学校入学時のみ生徒を募集し、高等学校の段階で新たに生徒を募集することは原則として行っていません。したがって、都立中高一貫校への進学を希望する場合、中学受検のタイミングが唯一のチャンスとなることを理解しておく必要があります。 この6年間の一貫した環境で、じっくりと腰を据えて学びたいと考えるお子様にとっては非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
都立中高一貫校に合格するためにすべきこと


私立の適性検査型入試で併願する
都立中高一貫校の適性検査は、思考力や記述力を重視する独特の形式のため、一般的な私立中学の教科型入試とは対策が異なります。しかし近年、都立と同様の「適性検査型入試」や、教科横断的な問題が出題される「総合型入試」を導入する私立中学校が増加しています。これらの私立中学校を併願先に選ぶことで、都立中高一貫校の対策で培った力を活かしつつ、入試本番の雰囲気に慣れたり、合格のチャンスを増やしたりすることができます。 志望する都立中高一貫校の出題傾向と近い入試を行う私立中学や、お子様の得意を活かせる入試科目の学校を選ぶなど、戦略的な併願を検討しましょう。
作文の添削を受ける
都立中高一貫校の適性検査では、課題文を読んで自分の考えをまとめたり、与えられたテーマについて論述したりする「作文」が非常に重視されます。単に文章を書く力だけでなく、課題の意図を正確に把握する読解力、論理的な構成力、そして的確な言葉で表現する力が総合的に求められます。作文の能力は独学で伸ばすことが難しいため、添削指導を繰り返し受けることが極めて有効です。 良い点や改善点を具体的に指摘してもらうことで、効率的に実力を高めていくことが期待できます。
都立中高一貫校一覧


東京都立大泉高等学校附属中学校
- 開校:2010年4月
- 所在地:東京都練馬区東大泉5-3-1
- 最寄駅:大泉学園
- 偏差値(参考値):63
- 教育理念:自主自律創造の精神を育国際社会のリーダーを目指す
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
東京都立桜修館中等教育学校
- 開校:2006年4月
- 所在地:東京都目黒区八雲1-1-2
- 最寄駅:都立大学
- 偏差値(参考値):65
- 教育理念:真理の探究をキーワードに生徒の主体性を尊重する
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
千代田区立九段中等教育学校
- 開校:2006年4月
- 所在地:東京都千代田区九段北2-2-1
- 最寄駅:九段下
- 偏差値(参考値):63
- 教育理念:自分らしさを発見し未来を作っていく探究人を育成する
- 募集人数:千代田区民80名/千代田区民以外の都民80名
- 高校募集:なし
東京都立小石川中等教育学校
- 開校:2006年4月
- 所在地:東京都文京区本駒込2-29-29
- 最寄駅:巣鴨
- 偏差値(参考値):70
- 教育理念:立志開拓創作という教育理念のもと小石川教養主義、理数教育、国際理解教育の3つの教育を実践
- 募集人数:特別枠5名以内/男女各80名から特別枠募集での入学者を引いた数
- 高校募集:なし
東京都立立川国際中等教育学校
- 開校:2008年4月
- 所在地:東京都立川市曙町3-29–37
- 最寄駅:立川
- 偏差値(参考値):63
- 教育理念:多様性あふれる学習環境でたくさんの「わくわく」にであえる学校
- 募集人数:海外帰国枠30名/一般枠130名
- 高校募集:なし
東京都立白鷗高等学校附属中学校
- 開校:2005年4月
- 所在地:東京都台東区元浅草3-12-12
- 最寄駅:御徒町駅
- 偏差値(参考値):62
- 教育理念:開拓精神をもって学びを深めグローバルな未来へ羽ばたいていく
- 募集人数:200名
- 高校募集:なし
東京都立富士高等学校附属中学校
- 開校:2010年4月
- 所在地:東京都中野区弥生町5-21-1
- 最寄駅:中野富士見町駅
- 偏差値(参考値):61
- 教育理念:自主自律、文武両道のもと、知性を高め教養を深める、品性を養い感性を磨く、自ら判断し挑戦する精神を高める。
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
東京都立三鷹中等教育学校
- 開校:2010年4月
- 所在地:東京都三鷹市新川6-21-21
- 最寄駅:吉祥寺駅
- 偏差値(参考値):62
- 教育理念:思いやり人間愛を持った社会的リーダーの育成
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
東京都立南多摩中等教育学校
- 開校:2010年4月
- 所在地:東京都八王子市明神町4-20-1
- 最寄駅:八王子駅
- 偏差値(参考値):63
- 教育理念:心・知・体の調和のとれた人間教育
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
東京都立武蔵高等学校附属中学校
- 開校:2008年4月
- 所在地:東京都武蔵野市境4-13-28
- 最寄駅:武蔵境駅
- 偏差値(参考値):65
- 教育理念:豊かな知性と感性、健康な心と体、向上進取の精神のもと国際社会に貢献できる知性豊かなリーダーを目指す
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
東京都立両国高等学校附属中学校
- 開校:2006年4月
- 所在地:東京都墨田区江東橋1-7-14
- 最寄駅:錦糸町駅
- 偏差値(参考値):67
- 教育理念:自らを厳しく律し、自ら進んで学ぶ
- 募集人数:160名
- 高校募集:なし
参照「シリタス/日本最大級の私立中学校・国公立中高一貫校情報サイト」
都立中高一貫校の中でも難易度の差がある


都立中高一貫校の中でも難易度には差があります。以下は2025年5月時点での各校の偏差値をランキングにしたものです。偏差値は相対的な数値ですので、あくまで参考値としてご覧ください。また、教育方針や所在地によってもどの学校がわが子に最適かという結論は変化します。
- 東京都立小石川中等教育学校(偏差値:70)
- 東京都立両国高等学校附属中学校(偏差値:67)
- 東京都立桜修館中等教育学校(偏差値:65)
- 東京都立武蔵高等学校附属中学校(偏差値:65)
- 東京都立大泉高等学校附属中学校(偏差値:63)
- 東京都立立川国際中等教育学校(偏差値:63)
- 東京都立南多摩中等教育学校 ― 偏差値:63)
- 千代田区立九段中等教育学校 ― 偏差値:63)
- 東京都立白鷗高等学校附属中学校 ― 偏差値:62)
- 東京都立三鷹中等教育学校 ― 偏差値:62)
- 東京都立富士高等学校附属中学校 ― 偏差値:61)
参照「シリタス/日本最大級の私立中学校・国公立中高一貫校情報サイト」
都立中高一貫校を目指すためにおすすめの学習法は?


正しい学習戦略を知る
都立中高一貫校の入試は、私立中学の入試とも、また小学校のテストとも異なる独特のものです。そのため、やみくもに問題集を解いたり、長時間勉強したりするだけでは、なかなか合格に結びつきません。まず、志望校の過去問を分析し、どのような力が問われているのか(読解力、論理的思考力、情報整理力、表現力など)を正確に把握することが不可欠です。 その上で、長期的な視点に立ち、基礎学力の定着から応用力の育成、そして実践的な演習へと段階的に進める計画を立てる必要があります。何から手をつけるべきか、どの教材を使うべきか、いつまでに何を達成すべきかといった「正しい学習戦略」を早期に確立し、親子で共有することが合格への第一歩です。
作文添削を早期から取り組む
都立中高一貫校の適性検査において、作文は合否を左右する非常に重要な要素です。配点が高いだけでなく、思考力や表現力を総合的に評価されるため、しっかりとした対策が欠かせません。しかし、文章構成力や論理的な記述力は、一朝一夕に身につくものではありません。そのため、できる限り早い段階から作文の練習を開始し、定期的に専門家による添削指導を受けることを強くおすすめします。 小学校の低学年や中学年からでも、書くことへの抵抗感をなくし、自分の考えを文章にする楽しさを知ることから始め、徐々にステップアップしていくことで、入試本番で自信を持って臨める確かな記述力を養うことができます。
当ブログでは受験勉強に関する様々な情報をプロ講師目線で発信しています。他の記事もぜひご覧ください。
都立中高一貫校の大きな魅力は何ですか?
私立と比較して学費を大幅に抑えられる点です。また、探究活動や国際理解教育など、大学進学以外の学習カリキュラムも充実しており、思考力や表現力を育む教育に力を入れています。
都立中高一貫校の入試は私立中学とどう違いますか?
主に「適性検査」という形式で行われます。教科ごとの学力試験とは異なり、小学校の学習範囲内で思考力や表現力を測るため、小学校の授業をしっかり理解し応用する訓練が中心となります。
都立中高一貫校を受検する際の注意点は何ですか?
人気があり倍率は3〜4倍程度です。入試は全校同日実施のため併願できず一発勝負です。また、小学校の成績(内申書)も評価対象となるため、日頃の学校生活も大切です。
都立中高一貫校の合格に向けて特に重要な対策は何ですか?
思考型の入試に対応するため、過去問分析に基づく正しい学習戦略を立てることと、配点が高く思考力・表現力が問われる作文の対策を早期から行い、添削指導を受けることが重要です。
都立中高一貫校は全部で何校あり、高校からの入学はできますか?
東京都には現在11校の都立中高一貫校があります(千代田区立九段中等教育学校を含む)。これらは6年間の一貫教育を行うため、中学校入学時のみ生徒を募集し、高校からの募集は原則行っていません。